ピクーロの子供たちは自分で服を着替えたり、ご飯を食べられるようになると、自分の仕事を決めます。仕事を決めたら、誰かの家へ通って一人前になるまで勉強をします。
そんなわけで家具職人のトト爺さんには3人の弟子がいます。
朝日が昇って森が明るくなると、早起きフィノが元気に工房に入ってきました。
「おはようございます!トト爺さん!今日の朝ごはんはクルミパンだよ!」
「おはよう!フィノ!今日も元気じゃな。それじゃあ、ホットミルクを作るからパンを切ってお皿に並べておくれ。」

ミルクが温まった頃、もう一人の弟子がやってきました。
「おはよう!トト爺さん!フィノ!。朝ごはんにクルミパンを持ってきたよ!」
「おはよう!ポルカ!今日はクルミパンがたくさんじゃな。さて食べようか。」
「爺さん、昨日の椅子、まだできてないの?」
「できておる」
「でも、脚が三本しかないよ」
「三本でも立つぞ」
「そういう問題じゃないと思うけど」
爺さんは返事をせず、温まったミルクを二つのカップに注ぎました。
窓の外では、朝の風が木々を揺らしています。
お陽さまが空のてっぺん近くまで昇った頃、3番目の弟子リッピがやってきました。
「おはよう!みんな!今日はパンを買ってきたよ!」
「クルミパンじゃな。」
「どうしてわかったの?」
トト爺さんと2人の弟子は目を合わせてフフッと笑いました。
「そろそろ昼ごはんの時間だな。ポルカ!裏の畑からトマトを採ってきておくれ。」
「はあい!」
ポルカは小さな籠を持って庭へ飛び出しました。
トマトといっても、小さな小さなプチトマト。ピクーロにとっては、それでも片手いっぱいほどの大きさです。
「赤いのを6つ、採ってきたよ!」
「おお、上出来じゃ」
トト爺さんは、よく研いだ小さなナイフでトマトを薄くスライスしました。
それからクルミパンをこんがりと焼き、チーズを塗って、トマトを挟みました。
「ほれ、食べてごらん」
「わあ! さっきのパンと全然違う!」
「同じパンでもな、ちょっと手をかければ別のご馳走になるんじゃよ」
爺さんは残りのパンも次々と焼いた。
「野イチゴの紅茶を入れようかね」
「ぼく、お湯を沸かす!」
「じゃあ、わたしはお皿を出す!」
さっきまでクルミパンでいっぱいだったテーブルが、今度は小さなサンドイッチと紅茶でいっぱいになりました。
窓からは午後の光が差し込んでいます。
トト爺さんは、ようやくゆっくり椅子に腰を下ろしました。
「さて、午後の仕事を始める前に、もう一つ食べようかの」
「ぼく、トマトきらい……」
一番小さな弟子が、サンドイッチを前にしてうつむきました。
「ああ、リッピは好き嫌いが多いな。じゃあ、蜂蜜をチーズに塗ってごらん」
「蜂蜜とチーズ?」
「そうじゃ。クルミパンにもよく合うぞ」
トト爺さんは棚の奥から、小さな琥珀色の瓶を取り出しました。
「蜂蜜はな、ほんの少しで十分なんじゃ」
リッピはチーズの上に蜂蜜をひとしずく垂らして、パンをかじりました。
「……おいしい!」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
「爺さん、もう一つ作っていい?」
「もちろんじゃ。クルミパンなら、まだ山ほどあるからの」
弟子たちは笑いました。
トト爺さんも笑いました。
けれど、ふと時計を見て、少し困った顔になりました。
「さて、そろそろ仕事をせんとな。今日はまだ椅子を一脚も仕上げておらん」
「爺さん、ぼく、なんだか眠くなってきた……」
「……ん?」
リッピはもう、テーブルに突っ伏していました。
「おやおや」
トト爺さんは蜂蜜の瓶を手に取りました。
『眠り蜂の蜂蜜』。
「しまったぁ~~~! これは眠れない夜にカモミールティーに入れる蜂蜜じゃったぁ~~!」
見ると、リッピはもう夢の中。
隣の弟子も、こっくり、こっくり。
「おい、おまえたちは食べておらんじゃろう!」
「だって爺さん……リッピがあんまり気持ちよさそうに寝てるから……ふわぁぁ」
トト爺さんは頭をかきました。
「やれやれ。今日は仕事にならんのう」
そう言いながら、工房の隅から小さな毛布を三枚取り出しました。
弟子たちに一枚ずつ掛けてやると、自分も椅子に腰を下ろしました。
窓の外では、森の葉っぱがさらさら揺れています。
「まあ、たまにはこんな日もよかろう」
そして爺さんも、うとうと……。
